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2009.04.04

映画「梅蘭芳」

新宿ピカデリーで「花の生涯―梅蘭芳」を観てきました。昨年NHKでTVドラマ版も放送された「北京ヴァイオリン」(2002年)や、真田広之さん出演で話題になった「PROMISE 無極」(2005年)のチェン・カイコー監督の作品です。

1993年公開「さらば、わが愛 覇王別姫」では、清朝末期から文化大革命に至る半世紀に及ぶ中国史を背景に、時代に翻弄された京劇俳優たちの愛憎を描いて、カンヌ映画祭パルムドールを受賞しています。2年位前にレンタルで観て、とても印象的な作品だったので、同じ監督が再び京劇の、それも今度は実在の名優「梅蘭芳」を映画化すると聞いて、公開を楽しみにしていました。新宿ピカデリーは全国に先がけての先行上映なので、特別鑑賞券等も利用不可の2000円均一だったのですが、観て来ちゃいました。

今回映画化された「梅蘭芳」は、「さらば、わが愛」の主人公と同時代を生きた、実在の人気京劇俳優でした。「さらば、わが愛」では、架空の人物を主人公とすることで、時代や社会の抑圧による悲劇性を登場人物に上手くからめて物語り、芸術性を重視する映像表現を多用して心象風景を象徴的に描くことに成功していましたが、その分、具体的な状況が読み取り難い場面もありました。

しかし今回の「梅蘭芳」では、実在の有名人を描く人物伝的な部分も重視された様で、物語の流れが解りやすく、登場人物の心情もドラマとして楽しめる作品になっていました。どちらが映画として良かったかは、好みが分かれるところだと思います。

ただ、「さらば、わが愛」に描かれた様な、子ども時代の修行の厳しさや、贔屓筋のパトロンとの関係などは今作にはなく、その分親子3代京劇役者であった梅家の出来事を綴ることで、清朝の時代からの京劇俳優たちの立場の辛さを伝えている、という様に、双方の作品を合わせ観ることによって、より当時の状況が理解出来る部分もあります。「さらば、わが愛」にあった文化大革命での苦しい日々と、それ以前に亡くなっていた「梅蘭芳」の幸運(?)、日本軍侵攻時代の抵抗の描かれ方の違い、などもそうだと思います。

梅蘭芳を歌手で俳優のレオン・ライが、彼と不倫の恋に落ちる京劇女優孟小冬をチャン・ツィーが演じています。梅蘭芳は女形俳優ですが、孟小冬は男役を演じる女優で、チャン・ツィーなかなか格好良かったです。「夫と別れてくれ」と迫る梅蘭芳の妻とのやり取りも心に残るシーンでした。

青年時代の梅蘭芳を演じたユィ・シャオチュン、女形もとっても美しく、舞台の外での潔癖な青年ぶりも素敵でした。日本からも、田中隆一少佐役の安藤政信さん、吉野中将役の六平直政さんが出演されています。

梅蘭芳は、戦前の中国で大変人気のあった京劇俳優で、映画にもあったアメリカ公演をはじめ、世界にも京劇の魅力を知らしめた名優でした。そして、古典芸能としての京劇の伝統を守るだけなく、その改革に力を注いだ人でもありました。前の映画を観たとき、てっきり古典だと思っていた「覇王別姫」も、元々あった項羽と虞美人の四面楚歌のエピソードを題材にした京劇ではなく、梅蘭芳の為に新たに書かれた脚本だったそうです。

映画の後、新宿の書店を回ったんですが、昨年西口に出来たブックファーストで「梅蘭芳―世界を虜にした男」(ビジネス社2009年3月刊)を見つけました。ハードカバーで1600円だったんですが、著者が「西太后」の加藤徹さんだったので、思わず買ってしまいました。映画とはまた違う、実在の梅蘭芳をより詳しく知る事が出来て、興味深い一冊です。

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