NHK教育TVで毎週日曜、正午の囲碁講座に引続きNHK杯をやる時間に、昨日は去る12月30日に亡くなられた加藤正夫さんの追悼番組「攻めの加藤・ヨセの加藤」を放送していました。「加藤正夫名誉王座の棋歴」はそのサブタイトルでした。この日放送予定のNHK杯3回戦第8局 張栩 名人・本因坊 VS 加藤正夫 九段 は、張栩 名人・本因坊の不戦勝という事になりました。加藤さん最後の対局は、昨年12月2日の第31期天元戦本線だったそうです。
出演されていたのは、加藤さんと同じ木谷実門下の、大竹英雄、石田芳夫、趙治勲、小林光一、武宮正樹の各氏。それぞれに木谷道場時代の思い出や、棋士加藤正夫の人となりなどを話されるとともに、タイトル戦での思い出の一局をご自分で解説して下さいました。
昭和51年第1期碁聖戦、大竹英雄に3-2で勝ち初タイトルを手にした時の第5局。
52年第32期本因坊戦、武宮本因坊を4-1で降し本因坊剣正となった時の第1局。
53年第33期本因坊戦、4-3で挑戦者石田芳夫を退けタイトル防衛の第7局。
58年第21期十段戦、3-2で趙治勲よりタイトル奪取の第5局。
61年第11期名人戦、4-0で小林光一名人よりタイトル奪取の第4局。
皆さん、ご自分が加藤さんに負けてタイトルを持って行かれた時の一局でしたので、今更ながらに「この一手が負着だった」などと悔しそうにしたり、「加藤さんのこの一手にやられた」みたいな話をされていて、解説の内容はさっぱり解らない私にも、その時の攻防への思いが伝わって来るようでした。
なかでも、席に座っていた時はあまりお話されなかった趙治勲さん、対局の解説になったらいつもの調子で面白かったです。石田芳夫さんの解説の時は聞き手で、「ここが失着でしたよね」と散々突っ込んでいたら、自分の解説の時は小林光一さんに突っ込まれて「他人の失敗はすぐ解るんですけど、自分の時は気づかないでやってるもんですね」と笑っておられました。その上、加藤さんとゴルフをした話にまで発展し、対局の解説中なのにスイングの真似までされてたのが可笑しかったです。
加藤さんは、これらのタイトル以外にも、昭和54年は本因坊、十段、天元、王座、鶴聖の五冠王、62年は十段、碁聖のタイトルを奪取、名人と王座を防衛し四冠王、そして平成14年第57期本因坊戦では、史上最年長55歳で本因坊位に返咲くなど、獲得したタイトルは47。タイトル連続保持記録14年6ヶ月で、史上最長だったそうです。
平成14年の本因坊就任式の挨拶も放送されましたが、「50代になって体力に自信が出てきた」というお話をされていてのを、複雑な思いで聞きました。兄弟子である大竹英雄さんも、「そうは言っていたとしても周りでもっと気をつけてあげれば良かった」と残念そうに話されていました。皆さんのお話を伺って、本当に、先輩にも後輩にも慕われ頼りにされていた方だったのだなぁ、と思いましたし、惜しい方を失ったなぁ、という思いを新たにしました。
加藤正夫名誉王座のもう少し詳しい棋歴は日本棋院HPの「棋戦・棋士」の棋士のプロフィールで紹介されています。
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